インターナルカーボンプライシングとは?内部炭素価格についてわかりやすく解説

内部炭素価格(インターナルカーボンプライシング)とは何か?

内部炭素価格(インターナルカーボンプライシング, Internal Carbon Pricing, ICP) とは、企業が自ら排出する温室効果ガス(GHG)に対して金銭的なペナルティを可視化して割り当てる手法です。この仕組みにより、企業は自社の排出量コストを財務意思決定に組み込むことができ、低炭素技術への投資や持続可能なプロジェクトの推進を促進します。

インターナルカーボンプライシングを導入することで、企業は気候変動に関連するリスクを管理し、将来の規制 (炭素税や排出量取引) に備えることができます。また、事業活動や長期的な投資戦略において環境負荷を考慮した意思決定が可能となり、企業全体での持続可能性が高まります。


内部カーボンプライシングの種類

企業はさまざまな方法で内部カーボンプライシングを実施しますが、代表的なアプローチとして以下の3つがあります。

1. シャドウプライシング (Shadow Pricing)

シャドウプライシングでは、GHG排出に対して理論的なカーボン価格を設定し、事業決定を評価します。実際に金銭のやり取りは発生しませんが、新しいプロジェクトや戦略の財務的な実現可能性を検討する際に、環境リスクが考慮されるようにします。

2. 内部カーボンフィー (Internal Carbon Fee)

この方法では、企業が自社排出量に対して料金を課します。排出するCO₂ 1トンあたりに設定された料金を各事業部門が負担し、その収益をエネルギー効率改善や再生可能エネルギーへの投資などの持続可能性プロジェクトに再投資します。

3. 暗黙的プライシング (Implicit Pricing)

暗黙的プライシングは、排出削減施策にかかる費用を基に算出されます。再生可能エネルギーや省エネプロジェクトへの投資額を、削減されたCO₂量で割ることで、削減コストを定量化することができます。


内部カーボンプライシングのメリット

内部カーボンプライシングは、環境規制への対応を超えたさまざまな利点を提供します。

利点説明
リスク管理将来的な炭素規制に備え、カーボン税や排出量取引制度への対応コストを事前に織り込み、財務的ショックを軽減します。
持続可能なイノベーションの促進部門に低炭素技術を採用させるインセンティブを提供し、エネルギー効率改善や再生可能エネルギーへの投資を促進します。
財務の透明性向上炭素の真のコストを明らかにし、財務計画に持続可能性を統合することで、低炭素プロジェクトの実現可能性を高めます。
脱炭素目標の支援自社排出量に価格を設定することで、企業の脱炭素戦略を財務的に構築し、排出削減を成長戦略の中心に据えます。

導入時の課題

内部カーボンプライシングには多くの利点がある一方で、導入には以下のような課題が伴います。

1. データ収集の難しさ

正確な排出データの収集は、内部カーボンプライシングを導入する上で最も大きな課題の一つです。特に、スコープ3(バリューチェーン全体の間接排出量)の計測は、供給業者やパートナーとの連携が必要となるため困難を伴います。包括的な排出データがなければ、効果的な価格設定は難しくなります。

2. 社内の合意形成

カーボンプライシングは、企業文化や部門間の認識に影響を与えるため、全社的な賛同が求められます。特に、排出量が多い部門やコスト増加を懸念する部門では反発が予想されるため、トップダウンでの指導と明確なコミュニケーションが必要です。

3. 適切な価格設定

内部カーボンプライシングには、グローバルな標準価格が存在しないため、適切な価格を設定することが課題となります。価格が低すぎると排出削減のインセンティブが弱まり、高すぎると事業活動や投資に支障をきたす恐れがあります。

4. 規制の不確実性

内部カーボンプライシングは将来の規制に備える手段ですが、規制の内容や適用時期が不透明である場合、価格設定や戦略に影響を与える可能性があります。


ベストプラクティス

導入に課題がある内部カーボンプライシングですが、以下のベストプラクティスを採用することで実効性が高まります。

1. 外部カーボンプライシングメカニズムと整合性を持たせる

内部価格を市場価格や外部の排出量取引制度に基づくことで、競争力と実現性を確保できます。また、規制が強化された場合でも柔軟に対応できるようになります。

2. ステークホルダーの関与を促進する

社内外の関係者を巻き込み、全社的にカーボンプライシングを理解し支持する文化を醸成します。特に経営層の理解を得ることは、組織全体での一貫した適用に不可欠です。

3. 戦略的計画への統合

カーボンプライシングを財務計画や投資戦略に組み込むことで、事業成長と持続可能性を同時に達成します。たとえば、新規プロジェクトや買収の評価時に、排出量とコストを考慮します。

4. 定期的な見直しと調整

市場や規制環境の変化に応じて設定した内部炭素価格を見直し、調整することが重要です。これにより、排出削減へのインセンティブを維持し、持続可能性目標の達成を支援します。

5. スコープ3排出量を含める

スコープ3排出量は、企業のカーボンフットプリントの大部分を占める場合が多いため、これを対象にすることで、バリューチェーン全体の排出削減が可能になります。供給業者やパートナーと協力して測定と削減に取り組みます。


内部カーボンプライシングを成功させることは、企業が持続可能な未来を構築し、規制環境の変化に適応するための鍵となります。炭素排出量に価値を与えることで、企業は気候変動への影響を最小限に抑えながら競争力を高めることができるのです。

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