Jブルークレジットは、日本のジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が2020年より運営しているブルーカーボンクレジット制度です。本記事では、海洋から創出されるカーボンクレジットについて、日本の取組を紹介します。
Jブルークレジットの創出量と価格
2020年に認証されたプロジェクトは1件にとどまりましたが、2023年には29件、総認証量認2,170tCO2を超えました。毎年増加傾向にありますが、Jクレジットと比較すると発行量は限定的です。
一方、価格についてはJクレジットより高額で取引されており、注目度の高さがうかがえます。(2023年度はデータなし)
Jブルークレジットの事例
ここでは、Jブルークレジットの例を2つご紹介します。いずれも2024年度に認証されたプロジェクトです。
尾道市沿岸域には、航路整備により発生した浚渫土砂を活用して、中国地方整備局により造成された人工干潟が4箇所(合計面積約75ha)あります。これらの干潟では、生物の種類・個体数の増加や多様な生物の生息が確認されたり、アマモ場が広がっている箇所も見られています。人工干潟の造成後は、浦島漁業協同組合および尾道市により、干潟・藻場の保全活動(生物生息場の保全活動、清掃活動等)が行われ、継続的な藻場・干潟づくりを行っています。
このプロジェクトで認証・発行されたクレジット量は87.6tCO2で、2024年度に認証されたプロジェクトの中では最大となります。
逆に、2024年度の認証・発行量が最小のプロジェクトがこちらの兵庫運河で実施されたプロジェクトです。クレジット認証量は1.8tCO2となっています。
この地域ではこれまで複数の活動を実施してきました。
- 兵庫運河へのアマモの移植活動
2014年7月に播種を開始し、2015年からは栄養体を移植しました。近年は地元小学校イベント等にて播種しています。 - 「あつ浜」プロジェクト
2020年に港湾構造物の撤去材を再利用して造成された「あつ浜」は、生物生息場の創出に関する実証実験を目的としています。同年11月のオープン以降、「あつ浜」は「兵庫運河の自然を再生するプロジェクト」の活動拠点として、種々の環境保全活動を展開しています。同プロジェクトでは、「あつ浜」と周辺海域において、生きもの調査、藻場のモニタリング、小学校の環境学習による啓発活動、ゴミ回収等の清掃活動、アマモの種子の播種などの活動を通して、干潟及びその周辺の生物多様性の向上を図っています。 - 「きらきらビーチ」プロジェクト
2015年「きらきらビーチ」造成後、アマモ場づくりを目指して、2019年まで、5年間にわたり舞子漁港内に自生するアマモを採取して栽培体移植をしてきました。2017年からは、花穂(種子)の形成が確認されるようになりました。それ以後は、種子の自然拡散、また、小学生や清掃活動時の播種イベントにより、生育範囲が徐々に広がりつつあり、多様な生きものの生息も確認されるようになっています(コウイカ産卵、シリヤケイカ産卵、メバル、カタクチイワシなど)。
2つの干潟と周辺水域における藻場、干潟の保全や活用に関わるこれまでの活動は、「兵庫運河の自然を再生するプロジェクト」により実施されてきました。これらの活動を今後維持・拡大するためには、資質材の調達、維持費(燃料代含む)、監視体制の設立が必要であり、本プロジェクトでJブルークレジットの認証を受けることになりました。
企業がJブルークレジットを購入する理由
Jブルークレジットの購入者は主として大手上場企業です。これまでに、住友商事、東京ガス、セブンイレブン・ジャパンなどがJブルークレジットを購入しています。
ただし、Jブルークレジットの創出量が限定的であるため、1社あたりの購入量も多くはありません。これらの企業が購入する理由は、地域活性化が主であることがJBEの調査によってわかります。
Jブルークレジットを購入する理由(上位5つ)
- 地元での活動を応援したかった
- 活動している人や団体との付き合いがあり、応援したかった
- 活動プロジェクトそのものを知っていて、応援したかった
- その活動に直接あるいは間接的に関わったことがあり、応援したかった
- 自社内やグループ企業内への脱炭素の啓発に用いたかった
Jブルークレジットの今後の見通し
JブルークレジットはGXリーグで適格カーボンクレジットとして認められているブルーカーボン由来のカーボンクレジットです。そのため、GXリーグに参画している企業からの引き合いは増加する可能性があります。適格カーボンクレジットについてもっと知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
一方で、国内のブルーカーボンは藻類を中心としているため創出量が多くなく、供給量には限界があると考えられます。ポテンシャルの大きいブルーカーボンですが、国内では需要に応えられるほどの体制が整備されるには時間がかかることが想定されます。創出量の増加に向けて各プレイヤーの協力が重要になってくることは言うまでもありません。
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